正義のネットストーカー

題:コロナ禍で気づいた「自分の歪み」について(800字)

指定ワード:グローバル・ひとりよがり・虚心坦懐

 

  

 

「タイプです!自粛期間ヒマで…よかったら話しませんか?笑」

その何の特徴もない1件のメッセージに私はすぐさま反応した。

「ありがと!嬉しいです」

いかにも好意的な絵文字で媚を売る。相手の求めている女の子像を壊さずに会話を続けるのがポイントだ。

 

 裏垢界隈をご存知だろうか。知る必要もない界隈だが、虚心坦懐に聞いてほしい。ツイッターには自撮りを載せて「いいね」を稼ぎ、承認欲求を満たしている人がいる。裏垢界隈はその中でも、刺激の強い写真を載せる人の集まりを指す。胸や脚を強調した写真に煽るような文を載せ、多くの男性からDMをもらい個人的なやりとりを行う。こんなのはコミュニケーションではなく単なるひとりよがりな自慰行為だ。わかっている。わかってはいるが、私の裏垢には100人以上のフォロワーが存在する。アカウントを開設して1日も経たずにこの量だ。本人かも不明な1枚の写真で10人以上の男からメッセージが飛んでくる。中には海外の男性も多く、英語・中国語・アラビア語が散見されたのは印象的だった。エロのグローバル化は凄まじい。

 

 基本的にメールには反応しないのだが、冒頭の「ぽむきちさん」にはすぐに返信した。ぽむきちさんはほんの2ヶ月前にアカウントを開設したばかりであり、自分の自撮りは載せず女子にリプライを送るスタイルらしい。語尾には決まって「DMいきませんか?」と付けており、2人でのメールがしたいのだとわかる。いいね欄には髪の長いグラマラスな女性の写真が並んでおり、好みもわかりやすい。数回やりとりを重ね、ついに誘いがきた。

 

「今度の土曜、遊びませんか?コロナ怖いし、どこか屋内で!」

涙が止まらなかった。絶望と怒りで震える手を必死に抑えながら彼氏にLINEを送る。

「これあんただよね?」

 

 私は歪んでいた。彼氏の浮気の証拠を得るためなら、自ら裏垢女子なることすら厭わないのだ。